施主はゼネコン設計部の友人。長年温めてきた基本プランを私たちに持ち込んできたところから始まりました。彼が描いた基本プランの平面図、実現したいコンセプトを守りつつ、木造住宅として実現可能なディテールへの移行やコスト調整を加味して設計していくこととなりました。
場所は清瀬郊外の実家の敷地内。両親を見守ることのできる距離感で“終の棲家”を建てようという計画。法的には “敷地分割”をしつつも、物理的に仕切る必要はないので親側の敷地と一体使いをする計画です。
ご両親が丹精に手を入れた庭が主屋の南側にあり、その向こうに広大な生産緑地が広がるという恵まれた立地条件を生かし、母屋とこの離れが鈍角のL字型になっています。主屋からもこの家からも眺めを最大限確保しようという考え方です。
鈍角に開いた長手方向はちょうど南北軸。南からのトップライトを帯状に取るという友人のデザインを理解はしていましたが、構造上と温熱環境の観点から、1820mmピッチに屋根をつなげることを提案し、さらに夏の強い日差しを遮り冬の光をしっかり入れる勾配付きのルーバーを提案しました。職場は違えど、学生時代同じ環境で建築を勉強してきた仲間です。すぐに理解してくれ、密度を上げる方向に一緒に考えていくこととなりました。
勾配のついたルーバーにプリズムを仕込んで虹を映し出そうと考えたのはご本人です。原寸の模型を作り、私たちを説得してきました。私たちにとって家の中に虹をつくるというのは未知の世界でしたが、本人たっての希望を尊重し覚悟をもって現場に臨みました。
私たちは彼のアイデアに応えるべく、虹を映しだす珪藻土の壁に対して、水平に延びるこての引き方を左官屋さんに お願いしました。はたして、水平のこて跡だけ残し通常はストロークの継ぎ目として出てします縦のこて跡を一切見せないという職人技の壁に仕上げてくれました。
トップライトとプリズムルーバーからの光と影、そして正午の1時間あまり発生する虹を、職人の手跡が感じられる土壁で受け止めています。