前回に続き、耐震補強の話をします。♯1では、梁下に入れる補強梁のサイズ算出の仕方を紹介しましたが、今回は既存の構造材と新材の緊結方法で悩んだことを紹介します。
「悩んだ」という表現にしたのは、いろんな事例に応じていろんな考え方が出てくるはずで、どんなケースにも当てはまる模範解答は存在しない、からです。
補強梁を入れたとき、その両端に補強梁からの力が伝達したときの柱のあり方を検討しなければなりません。負担荷重が変わらなければ柱断面のサイズは既存のままで大丈夫ですが、梁との緊結の仕方が問題になります。本来、梁は梁同士を羽子板で結び、管柱の柱頭にはN値計算をした金物を梁との間に取り付けますが、補強梁は柱頭の側面にぶつかることになります。
既存柱にホゾを新しく刻むことは断面欠損の問題がある、が大きくなる、直交する梁と羽子板で結ぼうと思っても補強梁のレベルに結ぶ相手がいない、等々問題が出てくるので、安全なのは既存の柱に添え柱を入れることです。既存の柱と同寸のものを入れれば問題ないですが、外周部だと断熱材がその分減る、コストがかかる、などが気になってきます。
私の決め方としては、根継ぎ(金輪継ぎ)をし、かつ、筋交いも入れたところ、上階に陸立ち柱があるところなどは既存同寸の105角、他は60×105としました。
60 ×105 は既存の柱と一体化しないと単独で座屈を起こすリスクを抱えます。
一体化させる方法としては、 貫通ボルトでの補強は小断面なので、断面欠損が大きすぎ、150ピッチで柱側と添え柱側両方から打つというのも考えられますが、相手部材へののみ込みを揃えようとすると釘の種類を変えないといけないので効率が悪く釘の管理も徹底できない。ラグスクリューは細かいピッチで打つのもコスト面で現実的ではない。
どれもデメリットが多いと悩んでいた時、火打ち材を貫通ボルトの代わりにパネリードの群打ちで同耐力が出る記事を思い出しました。パネリードのホームページで強度データを調べると、相手部材へののみ込み長さと耐力が概ね比例することを確認。だからと言って場所場所で種類を変えると釘管理が大変なのと無駄な箱買いをすることになるので、3種類までに整理。そして価格を調べ、施工動画で施工難易度を確かめて、柱と添え柱の緊結をパネリード(Sタイプ)で行うことを決めました。性能とコストを両立させるのは手間暇かかります。
ただ、部位部位で釘ピッチなどが妥当か、パネリードのメーカー、シネジックさんの技術部に質問して、帰ってきた回答付きPDFが冒頭と下の画像です。
大変参考になりました。釘ピッチを3分の2程度減らせそうです。